骨盤臓器脱のほかに、もうひとつ骨盤底筋の機能低下によって起こりやすくなるのが尿失禁です。一般に尿失禁が多くなるのは40歳代以降で、日本排尿機能学会によると40歳以上の女性の半数が頻尿に悩んでいます。ところが、実際に尿トラブルで医療機関を受診するのは8%以下。「年だから仕方ない」とあきらめているかもしれませんが、尿トラブルには予防法や治療法があります。

骨盤底筋は臓器を支える以外にも、排尿したり止めたりするときに重要な役割を果たしています。その骨盤底筋が分娩や加齢によって緩むと、尿道を閉じられなくなったり、膀胱の収縮を止められなくなったりします。しかも、女性の尿道は3~4cmと短いため、尿が漏れやすくなっているのです。

尿失禁の種類には、次の3つがあります。

  • 腹圧性尿失禁…くしゃみをしたり、重いものを持ったりして、お腹に力をいれたときに尿漏れする。女性の尿漏れの半数がこのタイプです。
  • 切迫性尿失禁…尿意を覚えると我慢できず、トイレが間に合わない
  • 混合性尿失禁…腹圧性と圧迫性の両方がまざったタイプ

治療法について

腹圧性尿失禁

骨盤底が緩んで尿道がぐらぐら動いているので、尿道が閉じられなくなっているために起こる尿失禁です。加齢に伴う筋力の低下も原因の一つですが、肥満や便秘、重いものを持ち上げるなどの骨盤底に力をかける生活習慣にも原因があります。また、きつい下着やコルセットの着用が尿漏れを助長させることもあります。

思い当たることがある場合は、まずは生活習慣を見直すことから始めましょう。軽い症状であれば、骨盤底筋を鍛える体操をすると改善につながることがあります。

重症の場合は、外科的手術をしたり、コラーゲン注入や電気刺激で骨盤底筋の機能回復を目指すこともあります。

切迫性尿失禁

膀胱が勝手に収縮して尿漏れを起こす運動性と、膀胱が過敏に反応して尿漏れを起こす感覚性があります。切迫性尿失禁の原因は多岐に渡るため、なかなか原因を特定できないこともありますが、治療は内服薬を用いたものが中心になります。骨盤底筋を鍛える体操でも改善を図れることがあります。

このほか、尿はたまっていないのに強い尿意を感じて我慢できない場合は、過活動膀胱が疑われることもあります。その場合、治療は内服薬の服用が中心になります。

適切な治療のために

治療法は種類別に異なるので、尿失禁で悩んでいる人は「排尿日誌」をつけてみましょう。排尿日誌は、飲んだ水の量、排尿があった時間、尿の量、切迫感や漏れがあったかどうかを記録するものです。記録しておくと尿失禁のタイプが推測できるので、この日誌をもって女性の尿失禁を扱っている泌尿器科や産婦人科を受診しましょう。

また、尿漏れに対して生理用品を使用する方もいらっしゃいますが、尿漏れパットの方が尿の吸収やにおい対策にも優れているためお勧めです。尿漏れの量に応じて様々なタイプがありますので、ドラッグストアなどでご検討してはいかがでしょうか。

骨盤底筋の障害からくる尿失禁は、加齢とともに誰にでも起こりうる症状ですが、誰にも相談できずに悩んでいる人もいるでしょう。生活習慣の見直しのほか、内服薬による治療によって改善できることもあるので、ぜひご相談ください。