女性は妊娠・出産が人生の分岐点になることもあります。とくに「これから勉強したい」「仕事で頑張りたい」と思っているときに予定外の妊娠をすると、キャリア形成に大きな影響を与えることもあります。パートナーができたら、望まない妊娠を避けるために避妊法についても考えておきましょう。

避妊法の種類

避妊法には、コンドーム、経口避妊薬(低用量ピル)、子宮内避妊用具(IUD)、リズム法(周期禁欲法:いわゆる安全日危険日)などがあります。ただし、図(最下部)のようにいずれの方法も完璧ではなく、避妊に失敗している人が多く存在します。

オギノ式

オギノ式は、月経予定日から排卵日を予測するものですが、月経周期は心身のバランスによっても左右され、予定通りにならないこともしばしばです。卵巣から排出されて卵管に取り込まれた卵子の寿命は排卵から24時間程度なので、この間に性交渉がなければよいと思うかもしれません。でも、精子は2週間程度生きることもあります。月経周期の数え方を間違えている人も多く、リズム法での避妊は失敗する確率が高くなります。俗に言われる「安全日」は存在しないのです。月経不順の人は「妊娠しづらい体質だから」と避妊しないことがよくあるようですが、実際はいつ排卵するかわからない=毎日が危険日。むしろ、避妊が難しいのです。

また、AVの影響か、膣外射精が避妊法だと思っている人が多くいます。膣内に挿入されたペニスからは射精前から精子が放出されています。あるいは、膣外に射精された精子が膣の入り口の粘液を伝って子宮内にたどりつき妊娠することもあります。

避妊の確率を高めたいのであれば、現在は経口避妊薬(低用量ピル)の使用が一番効果的です。

低用量ピル

低用量ピルは、黄体ホルモンと卵胞ホルモンという女性ホルモンを主成分とした薬で、服用すると血液中のホルモン量がコントロールされて排卵が止まります。正しい使い方をすれば、ほぼ100%避妊できます。

低用量ピルは、ホルモン量の違いによって、「1相性タイプ」「3相性タイプ」の2種類があり、次のような特徴があります。

●1相性タイプ…

28日間の服用期間中、飲み忘れを防ぐための偽薬(プラセボ錠)を除いて、すべての錠剤のホルモン量が同じ。月経調整に使われることが多い。飲む順番を間違えても効果が続くが、不正出血が起こることがある。

●3相性タイプ…

28日間の服用期間中、黄体ホルモンの量が変化するタイプ。3段階に分けて黄体ホルモン量が増えていく「漸増型」と、後半の5日間の黄体ホルモン量を下げる「中間増量型」がある。服用期間中の不正出血が起こりにくく、偽薬を飲んでいる間の消退出血(みかけの月経)が起こりやすくなる。

いずれもメリット・デメリットがあるので、どちらを使うかは目的に合わせて、医師と相談しながら決めるようにしましょう。

低用量ピルが使えない人(例えば、前触れのある片頭痛症状が出る人、これまで血栓症になったことがある人など)に対して、諸外国では「ミニピル」という方法があります。これは、黄体ホルモン単剤で行う避妊薬ですが、日本ではまだ認可されていない薬です。そこで、日本では不正出血などの治療薬として使われている黄体ホルモン(ノアルテン®)で妊娠コントロールを行うことがあります。当院でも、低用量ピルが使用できない方にはミニピルとしてノアルテンを使用しています。

もうひとつ覚えておいてほしいのが、

「緊急避妊ピル」

「緊急避妊ピル」の存在です。これは妊娠を望まない女性が、避妊をしない性交渉があった、避妊したけれど適切ではなかった場合に、緊急避難的用いられる薬です。

レボノルゲストレルという黄体ホルモン単剤を服用すると排卵が一時的に止まるので、性交後72時間以内になるべく早く服用することで避妊できる確率が高くなります。緊急避妊ピルは産婦人科などの医療機関を通じて処方を受けられるので、医師の診察を受けたうえで正しい使い方を教えてもらいましょう。ただし、性交渉のあった日に排卵している場合は、緊急避妊ピルを服用しても効果はありません。排卵を一時的に止めるだけなので、服用すれば妊娠しないという薬でもありません。あくまでも緊急手段ということを理解したうえで、妊娠を望まない場合はふだんから継続的に低用量ピルを服用するなどで避妊について取り組むようにしてください。

低用量ピルは、正しく服用すれば、ほぼ100%避妊できますが、性感染症までは予防できません。望まない妊娠と性感染症を防ぐためには、低用量ピルとコンドームの併用が理想です。

自分も、パートナーも、生まれてくる子ども、みんながハッピーでいられるために、「しまった」で始まる妊娠ではなく、「よかった」で始まる妊娠にしたいもの。パートナー任せではなく、女性自身が妊娠をコントロールすることを考えてほしいと思います。

当院では、ピル処方についてご相談を承っております。お気軽にご来診ください。